「鹿男あをによし」/万城目学

“さあ、神無月だ―-- 出番だよ、先生”

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奈良を舞台にした 鹿と主人公の「おれ」が繰り広げる歴史ファンタジー。
数ページ読み進めると
あれ?何かと同じ匂いのする文体と登場人物。

 

神経衰弱、マドンナ、婆さん、堀田、美術教師・・・


夏目漱石「坊ちゃん」へのオマージュがたっぷり注がれているがストーリーは全くの別物。
主人公は赴任先の奈良で「サンカク」と呼ばれる何かを運んでこい、と告げられる。
オッサン声の鹿に。

 

そこから卑弥呼やら古墳やら地中に眠る大鯰やらが絡み合い
あれよあれよという間に重大な役割を押し付けられる「おれ」。

 

ちなみに「あをによし」とは「奈良」にかかる枕詞。
有名どころだと こんな歌も。
“あをによし寧楽(なら)の京師(みやこ)は咲く花の薫(にほ)ふがごとく今盛りなり”(万葉集

 

登場人物の名前も “雅” がチラリズム
藤原先生=藤原京、小治田教頭=小墾田宮・おはりだのみや、大津校長=大津京、福原先生=福原京、長岡先生は長岡京

 

 

「坊ちゃん」が発表されたのが1906年
鹿男あをによし」はその約100年後の2007年出版。
さて 3007年頃には世の中にどんな作品が発表されるのでしょう。

 

「どんなにつらくて、悲しいことがあっても、さすがに10年経ったら忘れてるでしょう? だから、ああ、あんなことがあったなあって、10年後に笑っている自分の姿を想像するんです。そうすると、ちょっと気がラクになるんですよ」
(「鹿男あをによし」より)

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↑ドラマにもなりました